1)分子標的薬を上手に使う法

 現在の癌化学療法は副作用に悩まされるつらい治療法といえるでしょう。なぜなら使用薬剤が細胞毒性といって正常細胞も高い確率で破壊してしまうためです。正常な細胞特に成長の速い細胞、すなわち骨髄、消化管、毛髪の細胞がねらい打ちされてしまうためです。貧血・白血球減少、吐き気・嘔吐、脱毛が症状として起きてきます。近年イレッサを初めとした分子標的薬が数多く開発されています。細胞内の発癌遺伝子産物であるタンパクに特異的に作用するため、副作用が少なく効果的な癌治療が可能となりつつあります。  本ホームページでは海外並びに日本で入手可能な分子標的薬の適応・使用法をご紹介したいと思います。

現在世界で入手可能な分子標的薬

日本海外
ゲフィチニブ(イレッサ)
トラスツズマブ(ハーセプチン)
イマチニブ(グリベック)
エベロリムス(サーティカン錠)
ボルテミゾブ(ベルケード)
ベバシズマブ(アバスチン)
   
cetuximab (Erbitux)
erlotinib (Tarceva)
sorafenib (Nexavar)
sunitinib (Sutent)
lapatinib(Tykerb)
temsirolimus (Torisel)
panitumumab (Vectibix)
Decitabine(Dacogen)
tipifarnib (Zarnestra)

2)世界の標準療法

各種の癌の治療法を日本の標準療法、混合療法、未承認薬治療に分けて表を作ってみました。従来の抗がん剤の組み合わせを主流とした日本の化学療法にたいして、世界では数多くの分子標的薬を単独、分子標的薬同士の組み合わせ、分子標的薬と従来の抗がん剤との組み合わせ等縦横無尽にがん治療を行っていることが一見してわかると思います。
 胃癌、大腸癌、乳癌等約60種類のがんの治療法を一覧表にしました。ここでは乳癌の化学療法の一覧表をお示ししたいと思います。治療法を裏付ける文献も添えました。

小冊子「分子標的薬」

A5判36ページ50冊できました。ご希望の方ははがきで下記までお申し込みください。
410-0022 静岡県沼津市大岡日吉1728-2 はだクリニック

イマチニブ(グリベック)

適応: 慢性骨髄性白血病KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍
用法・用量: KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍の場合通常、成人にはイマチニブとして1日1回400mgを食後に経口投与する。
副作用: 吐気、下痢、顔面浮腫、眼瞼浮腫、皮膚炎、下肢浮腫、嘔吐、倦怠感
注意: 重篤な心不全、左心機能不全を起こす可能性がある
上記適応以外に数多くの固形癌に有効性を持つ有望な薬剤です。

トラスツズマブ(ハーセプチン)

適応: HER2過剰発現が確認された転移性乳癌
用法・用量: 初回投与時  4 mg/kg2回目以降  2 mg/kg90分以上かけて1週間間隔で点滴静注
副作用: 心障害
現時点ではハーセプチンの使用を推奨します。適応にHER-2過剰例とあるがHER-2陰性、neuregulin発現陽性例にも有効である。HER-2の受容体としての役割が再検討されつつある。

エベロリムス(サーティカン錠)

適応: 心移植における拒絶反応の抑制
用法・用量: 成人1日1,5mgを1日2回に分けて投与、3mgまで増量可
注意: シクロスポリンの併用により本剤のバイオアベイラビリティは有意に増加、シクロスポリンの腎毒性を増強するおそれがある。
禁忌: 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと
腎癌以外に乳癌、前立腺癌、白血病、悪性黒色腫、神経膠腫、膵癌に抗腫瘍効果が期待でき、しかも日本で販売されているのでここに取り上げました。

アバスチン bevacizumab (Avastin)

 2006年アバスチンはFOLFOX4 (5-FU, leucovorin, oxaliplatin)との併用で転移性大腸癌にsecond-line治療薬として認可されました。VEGFに対するrecombinant humanized monoclonal IgG1抗体です。IFL(5-FU, leucovorin, irinotecan)とアバスチン併用とIFL単独での生存期間中央値は20.3月と 15.6 月で有意の生命の延長がみられました。FOLFOX4でも同様な結果が得られています。奏効率は併用例で22.2%、FOLFOX4単独で8.6%です。
最も重篤で時に致死的副作用として消化管穿孔、創傷治癒遷延、出血、動脈血栓塞栓症、高血圧緊急症、ネフローゼ、うっ血性心不全があります。
 2007年6月11日中外製薬より発売ましたが、当分の間他の血管新生抑制剤を使用して治療する方が、副作用の危険性と効果から考えると筆者は得策と考えます。
アバスチン®点滴静注用100mg/4mL1バイアル 50,291円
アバスチン®点滴静注用400mg/16mL1バイアル 191,299円

cetuximab (Erbitux)

適応: 頭頚部癌、大腸癌
用法・用量: 投与時の副作用防止のため、抗ヒスタミン剤たとえばジフェンヒドラミン50mgの静注を前投薬として投与。

頭頚部癌
放射線療法と併用時:放射線照射1週間前、初回400 mg/m2 2時間以上かけて投与。維持療法として1週間に1回250mgを照射前1時間前1時間以上かけて投与。(6-7週間投与)

大腸癌
初回400 mg/m2 2時間以上かけて投与。維持療法として1週間に1回250mgを1時間以上かけて投与投与時の副作用がGrade 1 、2の時は投与量を50%まで減量、Grade 3、4の時は投与中止。
注意: 静脈内投与時、3%に重篤な副作用をおこし死に至る場合もある。症状的には気道閉塞(気管支痙攣、喘鳴、嗄声)、蕁麻疹、低血圧、心停止である。
アバスチンと同様にモノクロール抗体製剤は重篤な副作用の危険性や、投与法の煩雑さから出来るだけ使用を避けたい薬剤と考えます。

Erlotinib(Tarceva)

適応: 進行非小細胞肺癌・進行膵癌
用法・用量: 進行非小細胞肺癌 空腹時1日1回150mg経口投与進行膵癌 ゲムシタビンと併用時1日1回100mg経口投与
注意: 心肺障害
あまり有用性の高い薬剤とは思えません。

sorafenib (Nexavar)

適応: 進行腎癌
用法・用量: 1日2回1回400mg1日800mg服用する。空腹時少なくとも食前1時間、食後2時間に服用。
副作用: 左心不全 出血傾向 高血圧 皮膚症状 脱毛など
標準的治療終了後のsecond-third line薬剤として数多くの固形癌に非常に有効な薬剤と考えます。特に男性より女性に有効例がみられます。